sunoco日本サン石油株式会社

開発ストーリー

冷凍機油技術者が作り出した革命的冷凍機油
「Sunice HYBRID」の開発ストーリー

「Sunice HYBRID」はどのような経緯で誕生したのですか?
そうですね、「Sunice HYBRID」の開発は、2016年末に、経営陣を交えた技術会議の中で、“これまでとは違う新しい冷凍機油”についての会議を重ねて行った結果、誕生しました。
需要の大きなアジア市場では、冷媒の変遷に従って合成冷凍機油への転換が進んでいましたが、合成油の素原料は世界で限られていました。
こうした状況を打破すべく、当社の強みである冷凍機油の技術を軸にした「既存冷媒だけでなく様々な新規冷媒にも適用できる冷凍機油」を開発できないかという議論のなかで、当社の持つ技術を組み合わせれば新しい冷凍機油を創り出すことができるのではないか、と思い至りました。
「Sunice HYBRID」の開発ではどのような特長・性能を目指したのですか?
地球温暖化対策のため様々な冷媒が提案されていたなかで、目指すべき性能は『様々な冷媒に適用できる冷凍機油』でした。
エアコンや冷蔵庫など冷凍空調機器の業界では「冷凍機油は冷媒と溶け合うもの」という考え方が常識となっていますが、これはフロン冷媒が誕生した頃から、当時唯一の冷凍機油メーカーであったサンオイルが広めてきたものでした。
しかし、いくつもの冷媒メーカーから多くの新規冷媒が発表されるようになると、その冷媒ごとに冷凍機油の溶けやすさが大きく異なるため、冷凍空調機器の中での冷凍機油と冷媒の挙動が変わってしまうことがわかっていました。「様々な冷媒に適用できる」ようにするためには、どの冷媒でも冷凍機油と冷媒の挙動を同じような範囲にするため、敢えて「それぞれの冷媒と溶け合いにくい冷凍機油」を成り立たせる必要がありました。これを成し遂げるために、研究所のメンバーと急ピッチで様々な検証を進めていきました。
様々な配合をスクリーニングにかけ、必要な性能を満たせるようトライ&エラーを繰り返し、ようやく基本となる開発が終わりました。2017年5月に特許を出願することができましたが、エアコンなどの冷凍空調機器メーカーに評価していただくことが、最初の一歩でした。
ある意味、“業界の常識を覆す冷凍機油”を目指したわけですが、その後、お客様への提案を進めていく中で苦労した点があれば教えてください。
はい、これまでの業界の常識と相反するコンセプトに興味を示してくれる冷凍空調機器メーカーは少なく、やはり難色を示されるメーカーが多数を占めました。
「圧縮機から配管へ少しずつ吐き出される冷凍機油が圧縮機まで戻って来るのか?」、「熱交換器で冷媒が冷やしたり温めたりする働きを阻害しないか?」といった、冷凍空調の技術者であればすぐに思い至る疑問が投げかけられました。
これらの問題を解決するには、圧縮機設計者がエアコン設計者に説明しやすい材料を提供するところまでやらなければ、というところに至りました。
そこで、エアコンを用いて冷凍空調装置内での冷凍機油と冷媒の挙動を確認できる設備を導入することを考えました。
協力してくれるエアコンメーカーに相談したところ、冷媒と冷凍機油の挙動を目視できる“観察窓付き圧縮機”に乗せ換えた特別仕様のエアコンを提供いただくことができ、より検討を行いやすくすることができました。
オイルの量を確認できる特別仕様の圧縮機を搭載したエアコン
他にも「圧縮機からの冷凍機油の吐出量の測り方」や「圧縮機内の冷凍機油量の変動に対する考え方」など、様々な知見を日本のエアコンを立ち上げてきた諸先輩方から教えていただき、評価方法を築きあげることができました。
また、自社やお客様の様々な評価結果から、「冷媒に溶けにくい」ことによるメリット、例えば“冷媒量を節約できる”といった利点も見つかってきました。
現在、エアコンメーカーでの評価が進められており、冷凍車などの用途で一部のお客様に使われ始めています。
また、製品ブランドを「Sunice HYBRID」に定め、海外を含めた商標取得も進めています。
そして、2022年に岡山大学で開催された日本冷凍空調学会の年次大会では、この開発を通して培った技術の一部に関する学術発表を行い、冷凍空調技術者に「Sunice HYBRID」を広くアピールすることができました。
開発には大変苦労しましたが、こうした皆さんの協力で様々な知識・知見やノウハウも得られたので、技術的には大きくステップアップできたと思います。
「Sunice HYBRID」は、今後どのような冷凍機油になっていくと思いますか?
「Sunice HYBRID」が世界最初の冷凍機油「SUNISO」のようになるにはまだまだ道半ばですが、このコンセプトへの理解は着実に広がってきていると実感しています。
ますます広がっていく冷凍空調技術、ヒートポンプ技術を必要とする分野を通して環境・社会に貢献していくために、「Sunice HYBRID」というブランドと「冷媒が溶けにくいからこそ様々な冷媒に使える冷凍機油」というコンセプトを、より多くの用途・分野に展開し、「新たなスタンダード」に成長させていきたいと思います。